小さな環境を、植物に合わせる。
雨林植物は、種類によって好む温度や湿度、光の強さが異なります。しかし、すべてを初めから完璧に再現する必要はありません。
まずはガラスケースの中に基本的な環境をつくり、植物の様子を見ながら少しずつ調整していく。それがケース栽培の基本です。
このページでは、植物を鉢に植えたまま、ガラスケースや透明ケースの中で育てる方法を紹介します。ケース内へ直接植え込むテラリウムやパルダリウムとは、水やりや施肥の方法が異なります。
植物ごとの育て方の特記事項が、タグのQRコードからアクセスできるPLANT RECORD個別ページに記載されている場合は、そちらも参考にしてください。
このページの目次
必要なもの
- ガラス水槽やプラスチックなどの透明ケース(蓋つきのもの)
- LEDライト
- ライト用コンセントタイマー
- 温湿度計
- 水差し(植物への水やり用)
- 霧吹き(ケース内の湿度調整用)
基本的な環境をつくるには、まずこれらを揃えることをおすすめします。
また、鉢底から排水された水に鉢が浸かった状態にならないよう、鉢台などを用いて、ケース底面と鉢底の間に隙間をつくるとなおよいでしょう。
自動ミストなどの本格的なパルダリウム設備も魅力的ですが、必ずしも必要ではありません。
ケースと置き場所
ケースには、湿度を保ちながら開閉や換気ができるものを使用します。ガラス水槽のほか、爬虫類用ケースや透明な収納ケースなどでも代用できます。
一般的なアクアリウム用の水槽の蓋は、隙間が大きすぎて雨林植物に適した湿度を保てないことがほとんどです。
必要に応じて塩ビ板や食品用ラップなどで調整してください。
葉が壁面やほかの植物に触れ続けないよう、成長後の大きさも考え、大きさには余裕を持たせます。
直射日光が当たる場所は避けてください。透明なケースは内部の温度が急激に上がることがあります。窓際や冷暖房の風が直接当たる場所を避け、温度変化の少ない場所へ設置します。
光
雨林植物には、強い直射日光を好まない種類が多くあります。ただし、暗い場所でよく育つという意味ではありません。
室内では植物育成用LEDライトを使用し、タイマーで毎日同じ時間に点灯します。
植物が一日に受ける光の量は、ライトの強さと点灯時間の組み合わせによって変わります。強いライトを近くから当てる場合と、弱いライトを離して当てる場合では、同じ点灯時間でも植物が受ける光の量は異なります。
まずは1日10時間前後から始め、生育や葉色を観察しながら、10〜12時間程度の照射を目安にします。窓から自然光が入る場合は、その光も含めて考えます。
光が不足すると、茎や葉柄が細長く伸びたり、葉色が薄くなったりすることがあります。反対に、光が強すぎると、葉色が白く抜けたり、新葉が小さくなったり、葉焼けを起こしてしまうことがあります。
市販の植物育成LEDは、製品や植物との距離によっては、ベゴニアなど林床性の植物には明るすぎる場合があります。
光が強すぎる場合は、まずライトと植物の距離を離すか、調光機能がある場合は出力を下げます。点灯時間を調整する場合も、植物の日長反応を考慮し、大きく短縮しすぎないようにします。
一部の植物では、昼と夜の長さが開花や休眠などに影響します。必要な明るさや点灯時間は植物によって異なるため、PLANT RECORD個別ページに記載がある場合はそちらを優先してください。
温度
ケース内の温度は、室温と同じとは限りません。照明の発熱やケースの通気性、設置場所によって、室温より高くなることがあります。
ALATAで取り扱う多くの雨林植物では、20〜26℃前後をひとつの管理目安とします。ただし、高温を苦手とする種類や、より暖かい環境を好む種類もあるため、個別ページに記載がある場合はそちらを優先してください。
温湿度計はケース内に置き、湿度とあわせて確認します。夏はケース内の高温、冬は窓際や床付近の低温、冷暖房の風が直接当たることによる急激な変化に注意してください。
夏や冬にケース内の温度が目安を大きく外れる、または長時間外れる場合は、夜間や留守中を含めて空調を継続的に使用することを推奨します。継続使用が難しい場合は、最高・最低温度を記録できる温湿度計で一日の変化を把握し、ケースの設置場所や空調の使用方法を見直してください。
湿度
多くのケース栽培種では、一般的な室内よりも高い湿度を保ちます。湿度が下がった場合は、まず蓋の開き具合を調整します。それでも十分でなければ、植物に直接ではなく、ケース内の空間に向かって霧吹きを行います。
まずは相対湿度75〜80%程度を目安とします。必要な湿度は植物によって異なるため、PLANT RECORD個別ページに記載がある場合は、そちらを優先してください。
ただし、湿度は高ければ高いほどよいわけではありません。葉の水滴が長時間乾かない場合は、過湿や通気不足になっている可能性があります。
その場合は、ふたを少し開ける、換気する、水やりの量や頻度を見直すなどして調整します。
家庭用の温湿度計には多少の誤差があります。表示された数字だけで判断せず、葉の状態や用土の乾き方とあわせて観察してください。
水やり
空中の湿度を保つこととは別に、根へ水を与えることも必要です。
水やりは、植物の地上部に水がなるべく直接かからないよう、株元の用土へ水差しを使って行います。
ケース内では用土が乾くまでに時間がかかるため、決まった間隔ではなく、鉢ごとの状態を見て水を与えます。用土の表面、鉢の重さ、葉の張りなどを確認し、乾き始めたタイミングで用土全体が湿るように与えます。鉢の大きさや環境など、場合によっては2週間以上水やりが不要になることもあります。
ALATAオリジナルソイルは排水性・通気性が高く、根腐れのリスクを抑えやすい設計ですが、株の状態を観察して適切に水を与えてください。
鉢底に水を溜めたままにはせず、ポタポタ垂れる余分な水はある程度切っておきます。
特に高湿度のケース内では、葉を直接濡らす「葉水」の水滴が乾きにくくなります。葉面や新芽、葉柄の付け根などに水が長時間残ると、斑点や軟化、腐敗などの傷みが起こりやすくなります。ベゴニアをはじめ、葉が濡れた状態を苦手とする植物には、習慣的な葉水を行わないでください。
葉を洗うなど、濡らす必要がある場合は、ライトの点灯時間の前半に行い、換気や緩やかな送風によって、消灯までに水滴が残らないようにします。
空気の流れと換気
湿度を保ちながら、空気が完全に停滞しない環境が理想です。基本は完全密閉を避け、ふたをわずかにずらす、通気口を一部開けるなど、少量の空気が出入りできる状態にします。隙間を広げすぎると湿度が下がるため、温湿度計と植物の状態を確認しながら開き方を調整してください。
どうしても密閉になってしまうケースの場合や、ふたの隙間だけでは空気がこもりやすい場合は、一日一回程度を目安に扉やふたを大きく開け、外気を取り込むことをおすすめします。
大型ケースでは内部対流によって局所的な空気の停滞が起こりにくく、密閉度が高くても安定する場合があります。ただし、内部の対流と外気との換気は別です。
葉の水滴が長時間消えない、不快なにおいが発生するなどの場合は、換気や空気の流れが不足している可能性があります。ふたの開き方、換気の頻度、水やりの量などを見直してください。
新しい植物を迎えたら
到着直後の植物は、輸送や急な環境の変化による負担を受けています。
開封したら、葉の表裏、新芽、葉柄の付け根、株元、用土の表面などを確認します。害虫や糸状のもの、不自然な変色、軟化がないかを観察し、用土の湿り具合も確かめます。到着したからといって、すぐに水を与える必要があるとは限りません。
明らかな異常がなければ、すぐに植え替えたり、肥料を与えたりせず、まずは推奨される環境へ置いて状態を観察します。用土の著しい劣化、腐敗、害虫などが確認された場合は、その状態に応じて必要な処置を行ってください。
ほかの植物を栽培している場合は、害虫や病気の持ち込み・拡散リスクを下げるため、2〜3週間程度、別のケースで管理することを推奨します。ALATAでは、野生採集株や輸入株などはより長期間隔離しています。
隔離中も、葉裏や新芽、株元、用土の表面を定期的に確認します。
輸送や環境変化の影響が、1週間以上たってから既存の葉に現れることもあります。古い葉の変化だけで判断せず、株元や茎に軟化が無いか、新しい芽や葉が動き始めているかも確認します。
肥料・植え替え・用土
植物が環境に慣れ、新しい葉や根が動き始めてから、必要に応じて薄めた肥料を少量与えます。到着直後や、根傷み・葉傷みがあるときは施肥を控えます。
植え替えは、根が鉢底やスリットから多く見えるようになった、用土が以前より極端に乾きやすくなった、株に対して鉢が小さくなった、植え込み材が劣化して水はけや通気性が悪くなった、といった状態を目安に行います。
根が少し見えたからといって、すぐに植え替える必要はありません。特に小型の雨林植物では、必要以上に大きな鉢へ植え替えると用土が乾きにくくなるため、ひと回り大きい程度の鉢を選びます。
ALATAでは、販売時の植え込み材として水苔を使用する場合があります。水苔は保水性が高く、小さな株や導入直後の管理に扱いやすい一方、長期間使用すると徐々に繊維が崩れ、圧縮されることで、根のまわりの通気性が低下していきます。特に高湿度のケース内では乾燥にも時間がかかるため、古くなった水苔を使い続けると、根域が長期間湿った状態になりやすくなります。
水苔が黒ずんで崩れてきた、以前より長く湿った状態が続く、不快なにおいがするなどの変化が見られた場合は、植え替えを検討します。
ALATAで扱う多くのケース栽培種では、株が環境に十分馴染んだあとは、粒状の用土を主体とした培地への植え替えを、長期管理の選択肢としておすすめしています。
粒状の用土は、根のまわりに空気の通る隙間を長期間保ちやすく、高湿度のケース内でも根域の水分を管理しやすいためです。
植物によって適した植え込み材は異なるため、PLANT RECORDページに個別の記載がある場合はそちらを優先してください。
調子を崩したとき
植物に異変が見られたら、慌ててすべての条件を変えず、まず現在の環境と植物の状態を確認します。
- ケース内の最高・最低温度
- 用土が濡れすぎていないか、乾きすぎていないか
- 葉に水滴が長時間残っていないか
- 換気や空気の流れが不足していないか
- ライトの点灯時間と植物までの距離
- 葉裏、新芽、株元などに害虫がいないか
- 株元や茎に軟化、黒変、不自然なにおいがないか
- 導入後に植え替えや移動など、環境の変更を繰り返していないか
改善・変更する条件はできるだけ一度にひとつにし、その後の変化を観察します。水やりをした日付などを日々記録しておくと、原因を振り返りやすくなります。
ただし、腐敗の進行、害虫の発生、極端な高温など、放置すると短期間で状態が悪化する異常が確認された場合は、観察を続けるだけでなく、隔離や切除、環境の改善など必要な処置を優先してください。
植物を見る
温度や湿度の数字を合わせること自体が、ケース栽培の目的ではありません。
数値は、環境の状態を知り、変化を記録するための手がかりです。目安の範囲に収まっていても植物が調子を崩すことはありますし、同じ種類でも環境によって適した管理は少しずつ変わります。
新しい芽が動いているか、葉色や姿に大きな変化がないか。植物そのものを観察しながら、その株が安定して育つ環境を探していきましょう。